医療の質 QI推進活動報告2022年
#1 安全管理
① 転倒・転落発生率(民医連指標6)
指標の意義
転倒・転落を予防し、外傷を軽減するための指標。特に治療が必要な患者を把握していく
転倒転落を予防し、発生時の損傷を軽減する
指標として3項目
分子A 報告のあった入院患者の転倒・転落件数
分子B 入院中の患者に発生したインシデント影響度分類レベル3b以上の転倒・転落件数
分母 入院患者延べ数
2022年当院数値
A 報告のあった入院患者の転倒・転落件数 201件
入院患者の転倒・転落発生率 0.60%
B入院中の患者に発生したインシデント影響度分類レベル3b以上の転倒・転落件数 1件
入院患者での転倒転落によるインシデント影響度分類レベル3b以上の発生率 0.003%
(民医連中央値 0.08%) 2021年 %(2021年民医連中央値 0.10%)
考察
◎入院当初より患者の日常生活自立度や認知症度の評価と把握を行い環境設定を行っているが、ADLの改善に伴い定期的に環境設定を見直す必要がある
◎転倒虫センサーは手先の器用な患者であればクリップを取ってしまうので効果が得られないことがある 患者によってはセンサーマットと併用することにより転倒転落のリスクを最大限防げるよう環境設定が必要 🐞
◎転倒リスクのある患者には早期にセンサー設置を行い対応しているが、センサーの数に限りがあり、すべての患者に対応が困難な場合がある 優先度を見極め適切な配置が必要
② 病棟における薬剤関連事故発生率(民医連指標7)
指標の意義
薬剤安全管理者・薬剤師の病棟での役割のアウトカムとしての指標
2022年当院数値
薬剤関連事故発生率 0.083%(民医連中央値 0.34%) 2021年 0.13%(2021年民医連中央値 0.35%)
分子 薬剤投与違い、注射間違い(病棟のみレベル1以上)
分母 入院患者延べ数
考察
1.薬剤に関わる重篤インシデント事例は今年も発生していません。
2.レベル2以上は全体で0件(2022年 1件 2020年 3件 2019年 5件 2018年 4件 2017年 7件)でした。
3.86件の報告者の内訳は、病棟看護師34(46)、外来看護師30(21)、薬剤師12(10 )、医師1(1 )その他9です。( )内は2021年。
前年と比較すると病棟看護師は減小、外来看護師からの報告が増加しています。
4.2階病棟関連は21、3階関連は28(2021年2階 16 3階 28、2020年2階 34 3階 26)。
5.外来でのワクチン接種に関わるインシデント、病棟でのインスリン指示量の確認漏れ、薬剤配布ミスなど今年も同じような報告があります。
インシデントレポートの職場などでの検討が必要です。
① 65歳以上低栄養の改善率(独自指標)
指標の意義
血清アルブミン値を使用し病棟での栄養改善のとり組みの指標とする
2022年当院数値
低栄養の改善率 37.5% 2021年 %
分子 退院直近の血清アルブミン値が3.0g/dl以上になった患者数
分母 当該月の65歳以上退院患者のうち入院3日までの血清アルブミン値が3.0g/dl未満の患者数
2回以上アルブミン検査を実施している患者数
考察
1.生協病院の栄養改善に向けての多職種によるとりくみの評価ということになります。
指標は前年よりも低下しました。
2.入院中にアルブミン値が増加した患者割合も年々低下傾向にあります。
3.指標の分母(入院時の血清アルブミン値が3.0g/dl未満の患者数)が、128で過去最高値となっています。
低栄養の入院患者(在宅・施設管理、超高齢者、がん患者など)が増えているものと思われます。
4.今後とも低栄養、サルコペニアなどの入院患者の増加傾向は続く可能性があります。ひきつづき栄養改善を目標とした多職種(医師、看護師、管理栄養士、リハビリセラピスト、薬剤師など)によるとり組みが必要です。
② 褥瘡新規発生率(民医連指標5)
指標の意義
①褥瘡予防対策は、提供されるべき医療の重要な項目であり、栄養管理、ケアの質評価に関わる指標
②褥瘡アセスメント、予防アプローチの組織化の促進をみる指標
2022年当院数値
2022年 0.03%(2022年民医連中央値 0.08%)
分子 B)d2(真皮までの損傷)以上の院内新規褥瘡発生患者数
分母 入院患者延べ数
考察
-
他施設の褥瘡発生率と比較しても当院発生率は低い。
褥瘡対策に関し一定の評価ができる
-
褥瘡発生率は昨年と比較して同じである。
入院時、日々のアセスメントにより褥瘡発生・悪化の危険リスクにいち早く気づき、多職種による褥瘡対策チームで早期介入することにより予防及び早期処置による治癒率が向上した結果と考える
#3 感染管理
① 注射針及びそれに準じる鋭利な器具による皮膚の損傷からの血液曝露事例(民医連指標10)
指標の意義
他施設の状況を知り比較することで職員のリスク意識を高め安全管理をすすめる
2022年当院数値
件数 3件(割合 0.09%)(民医連中央値 0.10%) 2021年 7%(2021年民医連中央値 0.11%)
考察
2022年は3件と前年の7件より減少、一方分母が入院患者延べ数であり発生場所が外来・在宅あったがすでに民医連へ報告済みであるためそのままとした
在宅での針刺し事故2件はどちらの往診後の片付け時に発生しており、針使用後の安全装置の作動、携帯用針ボックスへの廃棄の徹底が必要と思われる
また携帯用針ボックスもフタの開け閉めがしやすいものに変更した
② 中心ライン関連血流感染発生率(民医連指標11)
指標の意義
血流感染は重篤な転帰となることが多いことから、マキシマムプリコーションが一般的には推奨されている
感染予策・手技の徹底だけでなく、栄養状態の改善、栄養摂取方法の選択、他感染症の治療の適切性、コンタミネーションの鑑別・防止含めて総合的な質が求められる、留置日数が長くなればリスクも高い、発生率(対1000人日)で表す
院内感染対策の充実度、特に刺入部のケアや一般的な清潔操作の遵守を反映
2022年当院数値
発生率 7.23%(民医連中央値 2.13%) 2021年 4.79%(2021年民医連中央値 %)
分子 当月の中心ライン関連血感染件数
分母 当院患者の中心ライン留置延べ日数
考察
カテーテル留置数は減少も感染者数は増加、感染率7.23と高くなっている
5件中3件は鼠径部からの刺入であり、感染リスクが高い
挿入時の消毒の手技、清潔操作の確認、オムツ交換時は排泄物の汚染に注意が必要である
③ 総黄色ブドウ球菌検出者のうちのMRSA比率(民医連指標12)
指標の意義
黄色ブドウ球菌自体は皮膚に常在する場合があり、したがって単純にMRSAの検出数をモニターした場合は、結果が検査数に影響を受ける為、総ブドウ球菌数を分母とすることで標準化する
2022年当院数値
MRSA比率 51.19%(民医連中央値 52.94%) 2021年 70.18%(2021年民医連中央値 56.52%)
分子 期間内のMRSA検出入院患者数
分母 期間内の黄色ブドウ球菌検出入院患者数
考察
MRSA比率は51.19%と昨年より低下、民医連中央値よりも低くなった
2022年のMRSA院内発生は14件、持ち込み10件
MRSAの院内発生率で比較すると
2020年:19/2236=0.85 2021年:13/2390=0.54 2022年:14/2175=0.64
発生率は0.54→0.64とやや高くなっている
④ アルコール手洗い使用割合(民医連指標13)
指標の意義
感染対策の基本である手指衛生を遵守する目安とする
2022年当院数値
2022年 使用割合 7.13% (2022年民医連中央値 11.18%)
考察
月別で見ると発熱外来受診者数や病棟でのクラスター発生により使用割合は大きく左右されたが、
年間平均ではで7.13、前年比111%上昇している
2019年からの4年間はコロナ流行の影響も大きいが使用割合は確実に上昇しており、手指衛生の意識
向上がうかがえる
コロナ5類移行後も使用割合を大きく低下させることのない様、ニュース発行での使用割合の可視化、
各職場でICTからの呼びかけを継続していく
#4 認知機能評価
高齢者への認知機能スクリーニングの実施(民医連指標42)
指標の意義
認知症患者は今後増加が見込まれている。認知機能を適切に評価する事で過剰な治療や人権侵害を防ぎ、適切な対応を可能にする。
2022年当院数値
割合 53.3%(民医連中央値 33.97%) 2021年 52.92%(2021年民医連中央値 34.88%)
分子 HDS-R、MMSE、CGA等の認知機能スクリーニングが実施された結果が記載されている患者
分母 入院日数が4日以上で65歳以上退院患者数
#5 チーム医療・退院支援・地域連携
① ケアカンファレンス実施割合(民医連指標23)
指標の意義
カンファレンスの実施ではなく、記録を評価記録を残すことによりチームでの情報共有が促進され、プロセス・アウトカムを評価することが可能となる
2022年当院数値
割合 75.59%(民医連中央値 58.85%) 2021年 72.99%(2021年民医連中央値 55.55%)
分子 入院期間中に1回以上、医師・看護師・コメディカルによるカンファレンス記録のある患者
分母 退院患者数
考察
中央値よりは上昇引き続き記載率は良い カンファレンス記録を書く習慣が継続出来ている
継続課題
・施設転院の増加
・内容充実した初回カンファレンス
② 在宅療養カンファレンス割合(民医連指標53)
指標の意義
地域における医療と介護の連携を促進し、在宅療養を希望する患者・家族のニーズに応えるプロセスの評価
2022年当院数値
割合 94.22% 民医連中央値 10.48%) 2021年 80.54%(2021年民医連中央値 8.87%)
分子 入院中に退院に向けて退院後の在宅療養を担う事業所の担当者を交えて検討を行った患者数
分母 在院日数7日以上の患者数
考察
民医連比較2018年から連続1位
継続課題:重症加算40%以上クリアしながら在宅復帰へのこだわり継続
#6 がん検診
東大阪生協病院は組合員などを対象にした検診などを精力的に行っている。2017年度の東大阪生協病院のがん検診が東大阪市のがん検診に占める割合は、胃がん検診 33.8%、大腸がん検診 30.1%、乳がん検診 21.8%、肺がん検診 31.5%、子宮がん検診 14.1%である。
① 胃がん検診後の胃がん発見率
2018年1月から東大阪市の内視鏡検診が開始された。
2022年当院数値
胃透視検診後の胃がん発見率
0.022%(胃がん検診 4532件 胃がん 1件 2021年 0.086%)
他院で精査を実施した件数は含んでいない。2019年度消化器がん検診全国集計の胃がん発見率は0.066%である。
内視鏡検診後の胃がん発見率
0.423% 胃がん発見数:5件(うち早期がん4件) 内視鏡検診数:1181件
2021年度内視鏡検診全国集計の胃がん発見率は0.361%である。
考察
1.内視鏡検診によるがん発見率は、全国平均値を上回った。
2.コロナ禍を経て検診受診者全体の減少傾向は続いているが、内視鏡検診受診者は年々増加している。胃透視検診は前年よりわずかに減少した。
3.ピロリ除菌既往の割合は年々増加しているが除菌後での胃がん発見はあり定期的な検査が必要である(2名が除菌後)。
*2022年内視鏡検診受診者の除菌後41%、未感染が37%。
4.胃透視検診は、ピロリ感染ないし既往感染の描出に有効である。がん検診であると同時に「ピロリ抽出検診」として位置付け、内視鏡検査に結びつける、除菌に結びつける(→胃がんの予防につなげる)ことが重要と思われる。
5.今後、八尾市のがん検診(内視鏡検診含む)受け入れを開始し、さらに胃がん発見数の増加に結びつけたい。
② 大腸がん検診後の大腸がん発見率
2022年当院数値
大腸がん発見率 0.114%(大腸がん検診 8763件 大腸がん 10件)
他院で精査を実施した件数は含んでいない。検診の要精査率は5.45%。2019年度消化器がん検診全国集計の大腸がん発見率は0.126%である。
考察
1.大腸がん検診後のがん発見率はおよそ0.1%強で変化はない(全国集計値とほぼ同程度)。800人に便検査をして1人に大腸がんが見つかることになる。
2.大腸がん検診の要精検率も全国平均と差はなく精度は問題ない。
3.大腸がんは増加傾向であり(胃がんと異なる)今後も大腸がん検診の実施および陽性者の精密検査(大腸内視鏡検査、大腸CT検査)の実施が必要である。
*この間、大腸内視鏡検査時にコールドポリペクトミーが実施されるようになり(Clean Colon)最終的な大腸がんでの死亡事例の減小につながることを期待したい。
③ 乳がん検診後の乳がん発見率
2022年当院数値
乳がん発見率 0.41%(乳がん検診 2960件 乳がん 12件 2021年 0.45%)
乳がん検診は2960人、そのうち要精査と判定したのが136人(要精査率 4.59%)。
国立がん検診センターによる乳がん発見率 0.33%(2019年)
④子宮がん検診後の子宮がん発見率
2022年当院数値
子宮がん発見率 0.086%(子宮がん検診 2309件 子宮がん 2件 2021年 0.038%)
国立がん検診センターによる子宮がん発見率 0.03%(2019年)
#7 患者満足
① 患者満足度アンケート総合評価で「満足している」と応えた患者の割合(民医連指標59、60)
医療福祉生協連が毎年実施している患者アンケートを用いて集計した。
2022年当院数値
外来 92.1%(118/128) 2021年 94.2%
入院 92.0%(23/25) 2021年 91.4%
☆今回の調査では、昨年よりもアンケート数は少なく、外来は全体として下がっている。入院は母数があまりにも少なすぎるため参考程度とする。
【外来】
全体としてすべての項目で下がっている。特に「診察、会計、薬などの待ち時間は我慢できるものだった」が1.1ポイント以上マイナスとなっている。
【入院】
結果からは特にマイナスとプラスの差が大きく出ている。
・「入院中の学習や療養で退院後の生活に活かせるものが十分得られた」前回よりマイナス3.5ポイント
・「退院時に支払うおおよその費用は事前に知らされていた」前回よりマイナス1.8ポイント
この辺りの改善が求められるている